2023.10.04
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配偶者居住権とは マイホームを購入した後の将来について

更新井:2024年3月21日

配偶者居住権とは マイホームを購入した後の将来について

はじめに

 配偶者居住権をご存知でしょうか。
 配偶者居住権は
認められれば、亡くなった人の配偶者は、亡くなった人が所有していた建物に無償で住み続けることができる権利です。
 マイホームを購入する場合、土地と建物の持分を決めます。よくあるケースですが、奥様が働いていない場合は、当然ご主人の名義でローンを組みます。特に自己資金などを入れない場合はご主人で持分をすべて持つことになります。

 このような場合で相続が発生して場合、例えばご主人が亡くなり、ご主人の財産を奥様と2人の子供が相続することになりました。
不動産1500万円、現金500万円でトータル2000万円です。財産は奥様が半分1000万円で子供たちが500万円になります。このような場合、財産分与には不動産を売却しなければなりませんよね。ですが奥様は住み続けたい、このような場合に検討することができるのが配偶者居住権となります。

 今回は、配偶者居住権に関する民法のルールを理解しておきましょう。今回は、配偶者居住権についてや設定要件、注意点、相談先などを解説します。

配偶者居住権とは

 配偶者居住権とは、被相続人が所有していた家に、被相続人の配偶者が住み続けられる権利です。家を所有しているのは別の人である点に、配偶者居住権の大きな特徴があります。

 配偶者居住権を活用すると、ご主人を亡くした奥様は自宅に住み続ける権利を手に入れ、ご子息は配偶者居住権の負担のついた自宅の所有権を得ます。そうすることで、奥様は住む場所を確保できます。

配偶者居住権の成立要件は以下の3つです。

① 被相続人の配偶者であること
② その配偶者が被相続人所有していた家に被相続人が亡くなったときに居住していたこと
③ 遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判により取得したこと

 配偶者居住権は、2020年4月1日に施行された改正民法によって新設されました。
 従来の方法でも、亡くなった人の配偶者が、亡くなった人が所有していた不動産に対して一定期間住み続ける権利を与えます。この権利は、被相続人の遺言によって設定されることもありますが、遺言がない場合でも、法律によって自動的に設定されます。
 しかし、従来の方法では使い勝手がよくないケースもあり改正されました。

 近年平均寿命の長期化により、夫婦のいずれかが亡くなったあと、残された配偶者が一人で長期間生活するケースが増えたからです。このようなケースでは、配偶者の住居を確保する必要があります。配偶者としては、これまで住んでいた家に住み続けられることが望ましいです。しかし、その家が亡くなった人の所有だった場合は、前述でも述べたように相続の対象となります。

 相続手続きを経て、被相続人が所有していた家に配偶者が住み続ける従来の方法は、主に以下の3つでした。

1.配偶者が家の所有権を相続する
2.家を相続した人から配偶者が無償で借りる(使用貸借)
3.家を相続した人から配偶者が有償で借りる(賃貸借)

 しかし、1.ような場合、配偶者が家を相続した場合、ほかの相続人とのバランスに配慮するため、配偶者は家以外の財産(預貯金など)の相続を諦めざるを得ないケースが多くなってしまいます

2.のパターンで進めると家を相続した者が不動産を売却した場合、使用借権を第三者に対抗できません。もし新しい所有者に退去を求められた場合、配偶者は退去を迫られてしまいます。

3.は賃借権に基づいて住居を安定させることができますが、毎月賃料の支払いが発生するのが難点です。

 このように、頭ではわかっていても心では反発したくなるようなケースに陥ってしまう可能性が従来の法律です。
 できればバランスよく遺産分割を行いつつ、配偶者は無償で安定した住居を確保したいところです。

 配偶者居住権は、「バランスのよい遺産分割」「無償で安定した住居の確保」といったニーズを満たすことのできる選択肢を新たに設け、家庭の事情に合った遺産分割がしやすくなるように導入されたのです。

配偶者居住権の法的効果

 配偶者居住権が認められると、被相続人の配偶者は、被相続人が所有していた家に無償で住み続けることができます(民法1028条1項)。配偶者居住権は原則として終身存続するため(民法1030条1項)、死ぬまで家に住み続けることが可能です。ただし、遺産分割協議、遺言、家庭裁判所の審判といった配偶者居住権の設定行為によって別段の定めをした場合には、生きている間でも期限切れとなるケースも考えられます。

配偶者居住権のメリットは?

 配偶者居住権には、被相続人の配偶者が建物に住み続けるという従来の方法と比べて、以下のメリットがあります。

①登記により第三者に対抗できる
配偶者居住権は登記が義務づけられています。(民法1031条1項)、登記によって第三者に対抗することが可能です(同条2項)。

②遺留分問題のリスクを緩和できる
配偶者が建物の所有権を相続すると、配偶者の相続分が増えすぎて、ほかの相続人から遺留分侵害額請求(民法1046条1項)を受けるリスクがあります。

建物に配偶者居住権を設定した場合、配偶者は所有権を持たないが居住権を、所有者は所有権(所有権の価値-配偶者居住権所有権の価値になりますが)を得ることができます。

その結果、相続分がバランスよく各相続人に配分され、遺留分問題のリスクが緩和されます。

③配偶者が建物のとは別に生活資金や納税資金を相続できる
配偶者が価値の高い建物の所有権を相続する場合、ほかの相続人とのバランスを考慮して、生活資金や納税資金に充てる預貯金などを、ほかの相続人に与えざるを得ないケースが多いです。

 一方、配偶者居住権は所有権よりも価値が低いので、配偶者自身が預貯金などを相続しても、相続分のバランスが崩れにくい点がメリットの一つに挙げられます。
配偶者居住権は所有権よりもどのくらい価値が低くなるなどの具体的な話については、法律の専門家である弁護士・司法書士をはじめ税理士そして不動産鑑定士にご相談をお願いします。このコラムではこのような権利がありますよという紹介になります。

④賃料を支払う必要がない
配偶者居住権は、賃料を支払う必要がありません。賃料は支払う必要はありませんが、改正法では居住建物の「通常の必要費」は配偶者が負担する必要があります。

配偶者居住権と配偶者短期居住権の違い

 配偶者居住権と同じく、2020年4月1日施行の改正民法によって「配偶者短期居住権」が新設されました。配偶者短期居住権も、配偶者居住権と同様に、亡くなった人の配偶者に認められる、自宅などに住み続ける権利です。

ただし配偶者短期居住権には、配偶者居住権とは異なる以下の特徴があります。①発生要件
配偶者居住権は設定行為が必要となりますが、配偶者短期居住権は、相続開始時に亡くなった人が所有する建物に無償で居住していれば、原則として自動的に発生します。

②存続期間の制限があること
原則、終身存続する配偶者居住権とは異なり、配偶者短期居住権は存続期間が限定されます。

③実際に居住していた部分のみが対象であること
配偶者居住権は建物全体(居住用、賃貸併用の場合賃貸部分は含まない)に及ぶのに対して、配偶者短期居住権は、配偶者が実際に居住・使用していた部分のみが対象です。

④登記について
配偶者居住権は登記が義務づけられていますが、配偶者短期居住権は登記することができません。

⑤相続税について
配偶者居住権には相続税が課されますが、配偶者短期居住権には相続税が課されません。

配偶者居住権のデメリットや注意点

 配偶者居住権を設定することにより生じ得るデメリットや、設定時の注意点を解説します。

配偶者居住権には相続税が課される
配偶者配偶者居住権は、原則として配偶者の終身存続する強力な権利であるため、一定の財産的価値が認められています。そのため、配偶者居住権は相続財産に該当し、相続税の課税対象となります。配偶者居住権が設定された建物(の所有権)を相続した者については、建物の相続税評価額から、配偶者居住権の価額を引いた金額をベースに相続税が課されます。


配偶者居住権の存続中は物件の売却が困難
配偶者居住権が存続している物件は、当然ですが、原則として他の人が自分で住むことも、賃貸に出すこともできません。当該物件の売却の際に買い手を見つけづらいことがほとんどです。
いつ物件を売却できるのか、再活用できるのかが、不透明になってしまいます。

所有者と配偶者の関係性による注意点
物件の所有者と居住する配偶者の仲が悪い場合このようなケースが考えられます。例えば、建物の損耗などについて、所有者が配偶者に対して損害賠償を請求されてしまうトラブルなどが想定されます。

配偶者居住権を設定すべきケースでは、建物の所有権を誰に相続させるかについて、可能であれば配偶者居住権をが必要になる前に十分に検討して決めるべきでしょう。

配偶者居住権の設定に関する相談先

 配偶者居住権を設定する際に相談すべき専門家としては、不動産会社ではなく、主に法律の専門家である弁護士、司法書士、税務のプロである税理士が挙げられます。

まとめ 

 「夫婦でマイホームを購入したのはいいが、旦那が亡くなったので、配偶者が住むことができません。」なんてことの無いように、配偶者居住権は定められています。ましてや、昨今は性能向上リノベーションなど住宅も長持ちにそして機能も千差万別になっています。性能向上リノベーションを行った家からそうでない建物に引っ越した場合健康面にも影響があります。配偶者の住居を確保しつつ、バランスのよい遺産分割を行うため配偶者居住権をはじめその他の制度を自分にあった形で活用すると効果的です。

配偶者居住権の設定にあたっては、法律と税務の両面から慎重な検討が必要なので、弁護士、司法書士、税理士などの専門家へご相談ください。

 

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著者情報

宅地建物取引士 刈田 知彰

      (かりた ともあき)

ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。

私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。

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著者刈田の写真


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