2023.05.10
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マイホームを増築する際の注意点

更新日:2024年3月11日

 

 

 

1.はじめに

増築はご存じでしょうか。言葉は知っている方が多いと思いますが、本当の意味やまた、増築のメリットやデメリットを理解されていますでしょうか。今回は増築について解説していきたいと思います。

 

増築の定義とは?新築やリフォームとどう違うの?

増築とは、一般的に以下のように定義されています。ただし、定義は各社によって異なります。

 

増築とは?

既存の建物を壊さず(一部を壊して)に、床面積を増やすことです。建て替えに伴って床面積を増やす場合も含まれます。

 

近い用語に下記の用語などがあります。

 

減築 

既存の建物を壊さずに床面積を減少させること。建て替えに伴って床面積を縮小する場合も含まれる。

 

新築

空いた土地に建物を建てること。人によっては、増築するよりも、新築の建物に建て替えを選択する場合もある。

 

改築

既存の建物の構造部分を取り壊し、床面積を変えずに取り替えること。また、床面積を変えずに建て替えることも含まれます。

 

 

2. 増築の意義・メリット・デメリット

以下は、家に増築をすることのメリットとデメリットです。それらを理解することで、本当に増築が必要なのかどうかを判断しやすくなります。

 

メリット

家を増築するメリットは「居住空間の拡大」と「新築に建替えた際と比較してのコスト」「環境問題への配慮」です。

増築の目的は、生活空間を増やすという理由で、そのものがメリットにあたります。新たに子供部屋や書斎を作りたい人に向いています。新築への住み替え費用が安くなるかどうかは、物件によりけりになりますが、住み慣れた土地で二世帯住宅に拡張する場合などは、分かりやすく増築のメリットを感じられるかもしれません。

 

デメリット

住宅に増築するデメリットは「増築前の家と同じ外壁材や屋根材を用意できないため、家の外観が劣化する恐れがある」「地震によって既存の家との接続部分が割れやすくなる可能性がある」です。また、「施工の方法によって雨漏りしやすい住宅になる可能性がある」というデメリットもあります。

 

既存の住宅部分が古い場合、増築する際に同じ材料が使えないことがある。同じような材料を使ったとしても、デザインが異なるため、完成したときに増築部分の見栄えが悪くなることは避けられません。

 

また、増築部分と既存住宅の接合部分は、構造体が追加されるため、耐震性が低くなる可能性が高いです。そのため、地震や大雨によるひび割れや雨漏りが発生する可能性があります。耐震性を考慮できる適切な業者が増築した場合は、ひび割れや雨漏りの心配はありません。

 

3.増築の種類

増築とは、現在の住宅をそのままに、床面積を増やす工事のことです。増築には、大きく分けて3つの種類があります。

 

差しかけ増築

差しかけ増築とは、既存住宅の外壁の一部を撤去し、新たな建物と接続する方法である。外壁の一部を取り壊すだけなので、比較的安価にできるのがメリットです。

 

おかぐら増築

平屋に2階建て、2階建てを3階建てというように、既存の建物の上に新たな建物を増築する方法が「おかぐら増築」です。既存建物の荷重が大きく、基礎や柱、梁などの構造部分の補強が必要なため、コストが高くなりがちなケースが多い。

 

取り壊し増築

取り壊し増築とは、1階と2階の一部を撤去し、その部分に新しい建物を建てて既存の部分と接合する方法です。外観に統一感が出ますが、解体費がかかるため工事費が高くなる傾向があります。

 

 

 

4.マイホームに増築する際の「注意点」とは?

マイホームを増築する際の注意点は3つあります。家の状態によっては増築費用が高額になることもあるので、必ず条件を確認すること。

 

増築ができない条件を押さえておきましょう。

「建ぺい率」と「容積率」について

増築する際に無視できないのが、「建ぺい率」と「容積率」の2つの要素です。

 

「建ぺい率」とは、敷地の面積に対する建物の面積がどうかの割合のことです。

 

「容積率」とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積がどうかの割合のことです。

 

敷地面積に対して建築可能な面積の割合が決まっているため、「建ぺい率」や「容積率」の上限を超える増築はできません。「建ぺい率」「容積率」の上限は、土地によって異なります。土地を管理している不動産会社や自治体(用途地域図)などによってご確認してください。

 

10平方メートルを超える増築の建築確認申請について

10平方メートルを超える増築をする場合は、建築確認申請が必要です。建築確認申請とは、その建築物が法令に違反していないことを確認するための申請です。確認申請書を自治体や検査機関に提出し、手続きを行う必要があります。

 

準防火地域・防火地域の増築工事

土地には火災の危険を防ぐために「準防火地域」「防火地域」といった地域が定められていることがあり、その地域では仮に1㎡の増築工事であるとしても確認申請が必要です。

 

これは都市計画法において「市街地における火災の危険を防除するため定める地域」として各自治体が指定しているエリアであり、具体的には建物が密集している地域や幹線道路沿い、駅前などとなっています。

 

火事が起こった際などに延焼を防ぐためであったり、消防車など救急車両の通行を妨げないようにすることが目的です。

 

そのため増築を行う際には、自治体が公表している情報で準防火地域や防火地域に該当しないか、まずは確認しておかねばなりません。

 

準防火地域や防火地域であればすべての増築工事に確認申請が必要ですが、準防火地域や防火地域でないケースであっても先に紹介した条件である10㎡以上の増築工事では確認申請が必要となります。

 

既存建物との耐震性のバランスを考慮する。

建物の耐震性が箇所によって異なると、地震で倒壊する可能性が高くなると言われています。そのため、新旧の建物で耐震性を合わせることが必要になります。既存建物が古い場合は、現行制度の耐震性能の基準を満たしていない可能性があるため、専門家による検査を受ける必要があります。既存建物の耐震性が不足している場合、既存建物の耐震工事を行わないと増築ができません。

 

また、既存建物と増築部分の接続部は耐震性能も低下しやすいので、増築する場合は耐震性能に詳しい業者に相談することをおすすめします。

構造計算を行うことが唯一の解決策になります。

 

5.増築のための建築許可申請

通常、家を建てる場合、たとえ自分の土地であっても、建築を始める前に、都道府県や市区町村に建築する建物の種類を申請し、確認を受けなければなりません。これを建築確認申請といいます。この建築確認申請は、新築だけでなく、増築、改築、移転、大規模修繕・模様替えの際にも必要です。万が一、この確認を取らずに工事を開始した場合、罰則が適用されることもありますので、注意が必要です。

 

●例外

大規模な修繕や模様替え等に伴い、建築確認申請をする場合は、建築基準関係規定に適合しているかどうかの審査を受ける必要があります。但し、例外として4号建築物(木造2階建て、延べ床面積500㎡以下の建築物)に関しては確認申請は受けなくて良いとあります。

 

ここがポイントとなります。

 

つまり、木造2階建て、延べ床面積500㎡以下の建築物を4号建築物とし、確認申請を受けなくてよいとした例外規定を設けているのです。

 

一般の戸建て住宅は、ほぼ大半といってよいほどこの4号建築物に分類されております。この例外規定があるため、増築や改築は出来ないが、大規模な修繕や大規模な模様替えは出来るという理屈になっているのです。

 

但し、国土交通省 2025年4月施行予定 4号特例制度縮小 ~2025年建築基準法改正によるリフォームへの影響~|お役立ちコラム|東京中古一戸建てナビ (chukokodate.com)

2025年の建築基準法のよって改正されますので、お考えの方はお早めに。

 

 

6.増改の登記について

住宅を増築すると、不動産登記簿の内容が変わるので、必ず変更登記が必要です。この手続きを「建物表題変更登記」といい、建物増築の所有者は申請する義務があります。

建物表題変更登記は、土地家屋調査士に依頼して行う必要があります。

 

7.増築の確認申請で既存不適格となるケース

住宅を建てた後に法令が改正されると、建てた当時は要件を満たしていたのに、最新の法令に適合しなくなることがあります。このような状況に陥った住宅を「既存不適格建築物」と呼びます。もともと違法に建てられた「違法建築物」とは異なり、取り壊しや適合の強制は必要ありません。

 

既存不適格建築物に増築する場合、既存不適格建築物は遡及適用の対象となります。

既存の不適合建築物に増築を行う場合、増築部分を最新の法令に適合させるために大規模な改修等を行う必要があります。このように過去にさかのぼって法律を適用することを「遡及適用」といいます。したがって、増築を検討する前に、自分の家が現行の法令の基準を満たしているかどうか、事前によく確認しておくことが望ましいです。

 

8.増築計画の確認

まず、増築の計画を確認する必要があります。建物のどの部分を増築するのか、どんな使い方をするのか、予算はどれくらいか、などを慎重に検討し、計画を練り上げましょう。

 

ここまで同一棟増築について解説してきましたが、増築には別棟増築という種類もあり大きくこの2つに分類されます。

『同一棟増築』とは…既存建物に新しく建物を接続し、「一つの建築物(一体)」となるように増築すること。

『別棟増築』とは…既存の建築物とは離れた位置に、”用途上不可分(=既存建物と同じ用途)”の建築物を増築することです。

別棟増築の代表例にはカーポートがあります。

カーポートと言えば屋外にありますし、屋根と柱だけしかありませんから「これは建物ではないだろう」と考えがちです。

 

カーポートも、土地に定着していて、屋根や柱、壁などを有するものは建築物に該当します。

例えば、庭に物置を設置しようと考えて、DIYで物置を作った場合でも「屋内的用途あり」と判断されてしまうことがあります。

「屋内的用途あり」とは、雨風がしのげるというものであれば、増築であると判断されるのです。

同様にカーポートであっても、屋根や柱、壁などを有するものは雨風がしのげる「屋内的用途」に該当しますので、増築と判断されることになるのです。

 

そのため、10㎡以上のカーポートも増築する際には確認申請が必要となります。おおむね車2台~3台程度で10㎡以上となります。

 

 

9.まとめ 増築する前に確認すべきポイント

1.増築後のライフスタイルを想像し、利用法やどんな設備が必要か、どんな家具を置くかなどを検討します。将来、快適に暮らせるように計画を立てて工事を進めましょう。

2. 増築にかかる費用を正確に見積もり、余裕を持った予算計画を立てることが大切です。予算不足で工事が途中で止まってしまうのは避けたいところです。

3.増築の予算が決まったら、資金調達方法を検討する。住宅ローンやリフォームローンは金利や借入期間が様々なので前もってしっかりと検討しましょう。

4.工事費をしっかり見積もる必要があります。 増築には多額の費用がかかります。事前にしっかりと見積もり、予算を把握しておくことが大切です。工事費だけでなく、融資や諸経費、税金などを考慮することも忘れないようにしましょう。性能向上リノベーションを行うとイニシャルコストこそ、高くなりますが、ランニングコストは低くなりますので、将来を考慮しての資金計画も忘れてはいけません。

 

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著者情報

宅地建物取引士 刈田 知彰

      (かりた ともあき)

ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。

私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。

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著者情報 刈田知彰

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