2025.09.24
不動産ガイド 中古戸建て

【中古住宅購入トラブル】実例集から学ぶ失敗回避のコツ

はじめに:後悔しない中古住宅購入のために

「中古住宅を購入したいけれど、思わぬトラブルに巻き込まれないか心配…」 「購入後に後悔しないためには、一体どんなことに注意すればいいのだろう?」

中古住宅の購入を検討される際、このような不安を抱くのは当然のことです。新築とは異なり、中古住宅には目に見えないリスクが潜んでいる可能性があり、その選択には慎重な判断が求められます。

しかし、ご安心ください。中古住宅購入におけるトラブルを回避する最も有効な方法は、実際に起きた失敗例から学ぶことです。どのような点に注意すればリスクを避けられるのかを具体的に知ることで、失敗を未然に防ぐための知識を身につけることができます。

この記事では、長年不動産業界に携わってきた筆者、刈田が、中古住宅の購入を検討しているあなたに向けて、以下の内容を実例を交えながら詳しく解説します。

  • 中古住宅購入でよくあるトラブルの具体的な事例

  • 失敗を回避するための実践的な対策とチェックポイント

  • 購入後も安心して暮らすために知っておくべき知識

中古住宅の購入は、ご自身の、そしてご家族の人生における大きな決断です。この記事が、あなたの不安を解消し、安心して理想の住まい選びを進めるための一助となれば幸いです。ぜひ、最後までお付き合いください。

第1章:【事例別】中古住宅購入でよくあるトラブルとその原因

章の概要: 中古住宅の購入時には、残念ながら思いもよらないトラブルに見舞われることがあります。これらのトラブルは、金銭的な負担はもちろん、精神的にも大きなストレスとなります。本章では、特に発生頻度の高い代表的なトラブル事例を挙げ、その原因と具体的な対策の入り口を解説します。

1.1 建物の隠れた瑕疵(かし)に関するトラブル

瑕疵とは、売買契約の対象となる建物が、通常有すべき品質や性能を欠いている状態、つまり「欠陥」のことです。中古住宅では、この隠れた瑕疵が後から発覚するケースが後を絶ちません。

1.1.1 シロアリ被害の発覚

中古住宅のトラブルで最も代表的なものがシロアリ被害です。床下や壁の内部など、見えないところで被害が進行していることが多く、気づいたときには土台や柱が深刻なダメージを受けているケースも少なくありません。

  • 原因: 湿気が多く風通しの悪い床下環境、建物の基礎周りの木材の放置などがシロアリを呼び寄せる原因となります。

  • 対策: 売買契約前に、専門家による**床下インスペクション(建物状況調査)**を実施することが極めて重要です。被害が発見された場合は、駆除費用や修繕費用を売主と交渉する必要が出てきます。

1.1.2 雨漏りの発覚

雨漏りもまた、非常に多いトラブルの一つです。天井のシミや壁紙の剥がれとして表面化することもあれば、屋根裏や壁の内部で静かに進行し、建物の構造躯体を腐食させている場合もあります。

  • 原因: 屋根材の経年劣化(ひび割れ、ズレ)、外壁のシーリングの断裂、バルコニーの防水層の破断などが主な原因です。

  • 対策: 内覧時には、天井や壁、窓サッシ周りにシミやカビがないかを入念にチェックしましょう。特に、過去にリフォームされている箇所は要注意です。可能であれば、雨の日に物件を確認することも有効な手段です。

1.1.3 給排水管の劣化・故障

見えない部分のトラブルとして、給排水管の劣化も深刻です。床下や壁内を通る配管が老朽化し、水漏れや詰まりを引き起こすことがあります。特に、鉄管が使われている古い物件では、錆による赤水や漏水のリスクが高まります。

  • 原因: 配管自体の寿命(経年劣化)、メンテナンス不足が主な原因です。

  • 対策: 建築図面や修繕履歴で配管の種類や交換履歴を確認しましょう。専門家による調査では、ファイバースコープを使って配管内部の状態を確認することも可能です。

1.2 土地・境界に関するトラブル

建物だけでなく、その土地に起因するトラブルも存在します。これは隣人との関係にも影響するため、非常に根深い問題に発展する可能性があります。

1.2.1 隣地との境界が曖昧

隣地との境界線が明確になっていないために、購入後に隣人とトラブルになるケースです。ブロック塀がどちらの所有物か、あるいは敷地を越境して木の枝が伸びているなど、問題は多岐にわたります。

  • 原因: 古い土地で、境界を示す「境界標」が設置されていなかったり、過去の所有者間の口約束で境界が決められていたりすることが原因です。

  • 対策: 売主から**「確定測量図」「筆界確認書」**を提示してもらい、現地で境界標の位置を確認することが不可欠です。もしこれらが存在しない場合は、契約前に売主の責任で境界を確定させてもらうよう交渉しましょう。

1.3 契約内容に関するトラブル

物件そのものだけでなく、契約内容の確認不足が原因でトラブルに発展することもあります。

1.3.1 「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」の説明不足

「契約不適合責任」とは、引き渡された物件が契約内容と異なる場合(例:雨漏りしないと聞いていたのに雨漏りした)に、買主が売主に対して修繕や代金減額などを請求できる権利です。この保証期間や範囲についての説明が不十分だと、いざという時に「保証対象外だった」という事態に陥ります。

  • 原因: 仲介する不動産会社の説明不足や、買主自身の確認不足が原因です。

  • 対策: 契約前に、契約不適合責任の**期間(個人間売買では2〜3ヶ月が一般的)**と、対象となる範囲を契約書で明確に確認し、不明な点は必ず質問しましょう。

第2章:失敗を回避するための具体的な対策とチェックポイント

章の概要: 前章で挙げたようなトラブルを未然に防ぐためには、購入プロセスにおいて、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。本章では、安心して中古住宅を購入するために、買主が必ず実行すべき具体的な対策を解説します。

2.1 ホームインスペクション(建物状況調査)を必ず実施する

中古住宅購入における最大のリスクヘッジが、専門家による**ホームインスペクション(建物状況調査)**です。これは、建築士などの専門家(ホームインスペクター)が、第三者の客観的な立場で建物の劣化状況や欠陥の有無を診断するものです。

2.1.1 ホームインスペクションで何がわかるのか?

ホームインスペクションでは、主に目視で建物の状態を調査し、以下のような点を明らかにします。

  • 構造耐力上の安全性: 基礎や柱、梁などの構造部分のひび割れ、傾き、シロアリ被害の兆候

  • 雨漏り・水漏れの可能性: 屋根、外壁、室内、天井裏、床下などの雨漏りや水漏れの痕跡

  • 設備の動作状況: キッチン、浴室、トイレなどの給排水設備の動作確認

調査後には、写真付きの詳細な報告書が提出され、建物のコンディションを正確に把握できます。

2.1.2 費用と依頼のタイミング

費用は5万円〜10万円程度が相場ですが、建物の規模や調査内容によって変動します。依頼する最適なタイミングは、購入の申し込み後、売買契約を締結する前です。調査結果を踏まえて、修繕が必要な箇所の費用負担を売主と交渉したり、場合によっては購入そのものを見送るという判断も可能になります。

2.2 重要事項説明と売買契約書を徹底的に確認する

不動産取引において、最も重要な書類が「重要事項説明書」と「売買契約書」です。専門用語が多く難解に感じるかもしれませんが、ご自身の権利と財産を守るために、隅々まで目を通し、理解することが不可欠です。

2.2.1 重要事項説明書で確認すべきこと

宅地建物取引士から説明を受ける際に、特に以下の点は重点的に確認しましょう。

  • 物件に関する事項: 登記記録、法令上の制限(再建築の可否など)、道路との関係、飲用水・電気・ガスの供給施設、耐震診断の有無

  • 取引条件に関する事項: 代金の額と支払時期、手付金の額、契約解除に関する規定

  • 契約不適合責任に関する事項: 責任を負う期間、通知すべき期間

2.2.2 特約事項に注意

売買契約書には、個別の取引条件を定める「特約」が付されることがあります。特に「現状有姿(げんじょうゆうし)」や「契約不適合責任の免責」といった特約には注意が必要です。これらは、売主が建物の欠陥に対する責任を負わないとする内容であり、買主にとってはリスクが高まります。これらの特約が付いている場合は、その理由と許容できる範囲かどうかを慎重に検討しましょう。

2.3 既存住宅売買瑕疵(かし)保険への加入を検討する

「既存住宅売買瑕疵保険」は、購入した中古住宅に後から欠陥が見つかった場合に、その補修費用を保険金でカバーできる制度です。

2.3.1 瑕疵保険のメリット

  • 安心の保証: 専門の検査員による検査に合格した住宅のみが加入できるため、一定の品質が担保されます。万が一、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に欠陥が見つかった場合、最長5年間、最大1,000万円の保険金が支払われます。

  • 税制優遇: 瑕疵保険に加入すると、住宅ローン控除や住まい給付金などの税制優遇措置を受けられる場合があります。

売主が加入しているケースもあれば、買主が費用を負担して加入することも可能です。不動産会社の担当者に相談し、加入を検討することをお勧めします。

第3章:購入後も安心!長期的な視点で考えるべきこと

章の概要: 無事に中古住宅を購入した後も、その価値を維持し、快適に暮らし続けるためには、計画的なメンテナンスが不可欠です。本章では、購入後のトラブルを防ぎ、資産価値を守るためのポイントを解説します。

3.1 入居後のリフォーム・リノベーション計画

中古住宅の魅力の一つは、自分たちのライフスタイルに合わせて自由にリフォーム・リノベーションできる点です。しかし、ここでも思わぬトラブルが発生することがあります。

3.1.1 デザインと性能のバランス

見た目のおしゃれさだけを追求し、断熱性や耐震性といった住宅の基本性能を疎かにしてしまうと、「冬は寒く、夏は暑い家」「地震に弱い家」になってしまい、後悔することになります。リフォームを行う際は、デザイン会社や工務店と十分に協議し、性能向上も視野に入れた計画を立てましょう。

3.1.2 信頼できる業者選びと契約

リフォーム工事では、「追加費用を請求された」「工期が大幅に遅れた」といったトラブルも少なくありません。複数の業者から見積もりを取り、実績や評判を比較検討することが重要です。契約時には、工事内容、金額、工期、そして工事が遅延した場合の取り決めなどを書面で明確にし、契約書を交わすようにしてください。

3.2 長期的な修繕計画と資金計画

住宅は購入して終わりではなく、経年とともに様々な箇所が劣化していきます。将来発生するであろう大規模な修繕に備えて、計画的に資金を準備しておくことが賢明です。

3.2.1 修繕が必要となる時期と費用の目安

一般的に、以下のような周期でメンテナンスや交換が必要となります。

  • 10〜15年周期: 外壁塗装、屋根のメンテナンス、給湯器の交換

  • 15〜20年周期: キッチン、浴室、トイレなどの水回り設備の交換

  • 30年以上: 大規模なリフォーム、建て替えの検討

これらの修繕にはまとまった費用がかかるため、購入時点から毎月少しずつでも「修繕積立金」として貯蓄を始めることを強くお勧めします。

まとめ:賢い知識で、トラブルを避け理想の住まいを手に入れる

今回は、中古住宅の購入で後悔しないために、以下のポイントについて、私の経験を基に詳しく解説してきました。

  • 代表的なトラブル事例(建物の瑕疵、境界問題、契約内容)

  • トラブルを回避する3つの対策(ホームインスペクション、書類の確認、瑕疵保険)

  • 購入後の安心な暮らしのための視点(リフォーム計画、長期修繕計画)

中古住宅の購入は、確かに不安な点も多いかもしれません。しかし、事前にリスクを正しく理解し、適切な対策を一つひとつ着実に実行することで、その不安は大きく軽減できます。むしろ、新築にはない価格的な魅力や、自分好みにカスタマイズできる自由度の高さなど、多くのメリットを享受できる素晴らしい選択肢です。

この記事で得た知識を武器に、慎重かつ前向きに物件探しを進めてください。そして、わからないことや不安なことがあれば、決して一人で抱え込まず、信頼できる不動産会社の担当者や、ホームインスペクターのような専門家に相談することを忘れないでください。

あなたの選択が、ご家族にとって最高の「我が家」との出会いに繋がることを、心から応援しています。

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著者情報

宅地建物取引士 刈田 知彰

      (かりた ともあき)

ハイウィル株式会社では主に中古一戸建てや新築一戸建て住宅の仲介をさせて頂いております。刈田です。

私が不動産業界に飛び込んでから早18年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古住宅のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築住宅が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は大正八年創業のハイウィル株式会社で皆様の中古住宅の購入そして性能向上リノベーションをワンストップで行えるサービスの手助けをメインに物件のご紹介をさせて頂いております。とはいえ今はその狭間の時代となり、新築住宅も中古住宅どちらにも需要があり、マンションも含めて多角的な物件をご紹介させて頂いております。

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また、ハイウイル株式会社は築古戸建て住宅のリノベーションを得意としている会社になります。是非「増改築.com」もご覧ください。

著者情報 刈田知彰

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