2023.02.24
不動産ガイド 不動産取引

手付金はいくら必要?

更新日2024/2/22

手付金について

 

1.手付金について

 よく「手付金ってどれぐらい払ったらいいの」と質問を受けます。その質問にここで答えていきたいと思います。

 

 今回は手付金について解説していきたいと思います。不動産のご購入時には契約を行います。その契約時には手付金が必要になります。この手付金どれぐらい用意すればいいの?頭金ってどれぐらい用意すればいいの?というご質問を受けるのですが。この手付金の額ですが考え方が買主側と売主側2種類の考え方があります。

 

  まず1つは買主さんからの目線でお話をさせていただくとできるだけ少ないほう良いと思います。キャッシュが当然残るということなので出来るだけ使わない方が良いかと思います。

 昨今では住宅ローンをフルローンで借入することができます。物件金額だけではなくて諸費用も住宅ローンを当てることができます。「手付金は、残代金支払時に売買代金の一部に充当する」などと定められて売買代金の一部に充当されることが一般的ですが、実際、手付金として支払いこそしますが、決済のタイミングでその他の用途のお金となるのです。つまり買主目線では実質はお金0円で契約してもよいのではないかとなると思います。頭金としての性質としては手付金は絶対に必要というわけではないのです。

 実は契約上最初から手付金ゼロ円で契約することもできますが、その場合、契約に対してリスクが出てきます。

売主側目線の話になります。

 売主側目線では手付金の額がどのようにかかわってくるかというと手付解除という項目が契約に盛り込まれます。なしにすることもできますが大抵の場合は契約に盛り込まれます。契約解除とは簡単に言うと手付金を買主が放棄する代わりに契約をやめますという内容になります。例えば、買主が契約だけして雲隠れしてしまった場合、見つけ出すにもお金がいります。そのような場合、手付金は探すための費用ではないのですが、そういったリスクを一部でも回避することができるようになります。

  実質ゼロに近い額を例えば1万円で契約を行うと買主からすると1万円を払うだけで契約を解除することができるという契約になってしまいます。そうなると買主はペナルティーが少ないので買主側に有利な契約になってしまいます。これがまかり通るなら検討中の物件がいくつかあったとします。ですがリフォームの見積もりなどの理由で検討に時間がかかります。ですがその中の物件のどれかは買いたいので、すべての物件に1万円で手付金を支払い物件を止めてしまう事も可能になってしまいます。売主側からすれば途中で解約されてしまう可能性が高まり不安定な契約になってしまします。

 

 売主さんが一般の方の場合は手付金を無しにするということができます。また、やめる時には違約金を支払うという形に定めることもできます。

 あくまで一般の方の場合で売主が業者の場合は手付金解除ができないとすることはできません。売主と買主双方が履行に着手するまでは手付金解除ができるという契約になります。こちらは消費者保護の観点も含まれます。

 

  売主さんが業者さんの場合はできるだけ手付金を入れてくださいというような内容になります。

ですので、手付金を少なく契約にするっていうふうにプランを立てておられる方で気をつけていただきたいのが例えばリフォーム済みの物件とか新築戸建とか売主さんが業者さんの場合、売主さんが「手付金はいくらにしてください」となった場合その額が用意できないと契約することが出来ない可能性があります。

 

 買主目線では「手付金は抑えたい」売主目線では「手付金をできるだけ多くほしい」という具合になりますのでそのあたりを調整していくことが契約条件の調整になってくることになります。

 

 これらは一般的に多い例で、もちろん、売主に契約解除されるのが怖いので、沢山手付金を入れておきたいと希望される買主もいます。

 

 また似たニュアンスの不動産購入時の頭金の話をします。手付金と頭金は同じ意味で思われている方も多いと思いますが、頭金とは物件を購入する際に住宅価格(諸費用など)からローン借り入れ分を差し引いた部分のことです。頭金もできる限り支払わないことが良いのではと思います。その理由の一つとして今の住宅ローンは金利が非常に安いということが理由として挙げられます。出来るだけキャッシュを手元に置いて方が良いと思います。

 

 ここからは手付金について更に詳しく解説していきます。

 

2.手付金とは

 手付金とは売買契約が結ばれた際に相手方の債務不履行の有無を問わず解約権を認める目的の為、手付金は諦めるから「やっぱり買うのやめた」ができるということ。あるいは相手方に債務不履行があった場合には損害賠償もしくは違約金として買主から売主に対して支払われる金銭です。手付金を支払っても売買代金の一部を支払ったことにはなりませんが、契約時に「手付金は、残代金支払時に売買代金の一部に充当する」などと定められて売買代金の一部に充当されることが一般的です。

 

 また不動産の売買は契約後一定期間が経過した後に残代金の支払い・引き渡しが行われることが多いことから、その間の法律関係を安定させる意味を含めて契約時に買主が売主に一定の金銭を手付金として支払う慣習があり、その手付金の授受には契約の成立を表す意味合いがあります。

 

3.手付金の3つの役割

解約手付

「解約手付」とは手付金の授受により、当事者に解約権を留保させるものです。解約手付として手付金の授受が行われている場合には契約成立後であっても、一方の当事者だけの意思で契約解約ができます。手付金が解約手付である場合には「売主からは手付金の倍額を返還すること」または「買主からは手付金を放棄すること」により、損害賠償を負う必要もありません。

 

違約手付

「違約手付」とは債務不履行があった場合、買主違約のときには手付金が違約金として没収され、また売主違約のときは手付金を返還しなければならないとともに手付金と同額を違約金として支払わなければならないという意味をもつものです。多くの売買契約書では手付金に違約手付の意味をもたせています。

 

証約手付

「証約手付」とは、不動産売買が成立した証として買主から売主に対して交付される手付金です。 契約の成立を明確に表すために支払いが行われます。

 

4.不動産売買契約と手付金

 手付金には不動産売買契約の締結に当って、契約が成立していることを明確に表すという大切な役割があります。買主が手付金を支払い、売主が受領することで売主・買主双方が不動産の売買について明確な意思表示をしたことになるのです。 また売買契約を締結した後に、どちらかが契約を解除しなければならない状況になった場合には買主は支払った手付金を放棄する・売主は手付金を倍にして買主に返還することで契約を解除することができるのです。

 

5.手付解除とは

売主側が手付解除をするときの方法(手付金倍返し)

売主が契約を解除したい場合には、買主から受領した手付金を返還します。 さらに買主から受領した手付金と同額の金銭を買主に支払うことで手付解除ができます。

 

買主側が手付解除をするときの方法(手付金放棄)

買主が契約を解除したい場合には、手付金を返還してもらえる権利を放棄します。本来であれば返還されるはずの手付金を放棄することで手付解除ができます。

 

 手付解除により契約を解除することができるのは一定期間ということも覚えておきましょう。 一定期間とは「当事者の一方が契約の履行に着手するまで」のことをいい、履行の着手の具体例としては、売主であれば不引き渡しに向けて動産の傷んでいる部分を修正し始めた場合、買主であれば内金を支払った場合などがあります。 契約を締結した後に、当事者の一方が契約の履行に着手してしまうと手付解除による契約の解除ができなくなってしまうので注意しましょう。

 

6.手付金の支払いについて考えられるリスクと対応策

手付金が返還されない恐れが高まるケース

・売主である不動産業者が倒産した場合

・契約を締結したが、ローン審査が通らず不動産の購入ができなくなった場合

 このような状況に陥ってしまった場合、不動産業者が手付金の返還に応じずトラブルに発展してしまうことが考えられます。そのため、手付金を支払う際には、十分な対策を講じることが大切です。もちろん通常の不動産業者は住宅ローン特約や手付金の保全措置などの内容を契約に盛り込んで契約を行います。

 

住宅ローン特約とは?

 「住宅ローン特約」は、住宅を購入する際の売買契約に付ける特約になります。この特約は、住宅ローンの審査が通らなかった場合に、以下のような取り決めを行うものです。

 住宅ローンの審査が万が一通らない場合は買えませんので、手付金は(買主に)返してくださいね。一般的には「住宅ローン特約」と呼ばれますが、「融資特約」や「融資条項」とも呼ばれることがあります。この特約を付けることで、住宅ローンの審査が通らなかった場合に、買主は手付金の放棄や違約金の支払いなどが発生しないように保護されます。つまり、住宅ローン特約は、住宅ローンの審査が通らなかったときに、契約を解除するための保険のようなものと言えるでしょう。

住宅ローン特約には2つの主なタイプがあります。

解除条件型: 住宅ローンの審査が通らなかった場合に自動的に契約が解除されるタイプです。期限が到来しただけで自動解除されるため、審査にチャレンジしたい場合は注意が必要です。
 

解除権留保型: 住宅ローンの審査が通らなかったときに、一定期間だけ契約を解除する権利が発生するタイプです。自動解除ではないため、契約解除の意思表示が必要です。
住宅ローン特約を契約書で確認する際には、以下の内容を注意深く確認しましょう。

審査をしてもらう金融機関の名称
借入金額(予定)
本審査の承認結果が出るまでの日数
審査が通らなかった際の対応
住宅ローン特約による契約解除期限
契約解除についての方法

金利なども定める場合もあります。
住宅ローン特約は、住宅ローンの申し込みをする際にきちんと考慮し、適切に付けておくことが重要です。

 

 今回は手付金そして頭金についてお話をさせて頂きました。売主さんによっては手付金について厳しい意見をされる方もおられます。実際の取引ではそのあたり含めてご相談しながら進めていければと思います。

 

7.まとめ

 今回は手付金ついて解説してきました。手付金の金額は売主と買主で希望の金額が異なります。相場としては100万円や物件代金の5%から10%相当が多いと思います。状況に応じて特に用意できる金額が少ない場合などは、手付金によって契約を拒否されてしまうなので問題が出ないように先に相談しておきましょう。

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著者情報

宅地建物取引士 刈田 知彰

      (かりた ともあき)

ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。

私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。

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著者情報 刈田知彰

 

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