2022.10.05
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契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違いについて契約不適合責任を徹底解説

更新日:2023/12/25

 

2020年4月1日に施行された改正民法により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと改められました

 

注文住宅の建築にあたって竣工した建物に欠陥が見つかった場合には、契約不適合責任が極めて重要な意味を持ちます。施主・施工業者ともに、契約不適合責任に関する正しい内容を理解しておく必要があります。

1.契約不適合責任とは?
2.契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いは?
  ①契約不適合責任では、契約責任説を明示的に採用
  ②買主側が利用できる救済手段が増えた
  ③「隠れた瑕疵」の要件
3.契約不適合責任に基づき、施主・買主ができる4つの請求
  ①履行の追完請求
  ②代金減額請求
  ③損害賠償請求
  ④契約の解除
4.契約不適合責任に関する注意点
  ①契約不適合責任の期間について
  ②明記することで、契約不適合責任を回避可能
5.まとめ

 

 

ではご覧ください。

 

 

1.契約不適合責任とは?

 「契約不適合責任」とは、売買や請負などの契約に基づき引き渡された目的物につき、以下の3点のいずれかに関して契約内容との間に相違があった場合に、売主(施工業者)が買主(施主)に対して負担する法的責任をいいます。

 

  ①目的物の種類

契約上の目的物と、実際に引き渡された目的物の品目が異なる場合、契約不適合責任が発生します。

(例)シャッター付き窓のはずが普通の窓が設置されていた。

 

  ②目的物の数量

    契約上定められた目的物の数量に対して、実際に引き渡された数量が過剰又は不足している場合、契約不適合責任が発生します。

    (例)埋め込みライトが4か所設置されているはずが、3か所にしか設置されていない又は5か所に設置されていた。

 

  ③目的物の品質

    契約上定められた目的物の品質に対して、実際に引き渡された目的物の品質が劣っている場合、契約不適合責任が発生します。

    (例)大理石の床材を使用するはずが、合板材のフローリングが使用されていた。

  

  特に新築の注文住宅では、建物に欠陥や契約と相違が見つかり、契約不適合責任が問題となるケースが多いのが特徴です。

 

2.契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いは?

 2020年4月1日に改正民法が施行される以前は、「瑕疵担保責任」が契約不適合責任に近いものとして存在していました。

 

 改正前民法における瑕疵担保責任は、現行民法における契約不適合責任と類似し、売買等の目的物の欠陥・不備(=瑕疵)について、売主(施工業者)側の責任を認めるルールです。

 

 それでは、瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いは、どのような点にあるのでしょうか。

 

 ①契約不適合責任では、契約責任説を明示的に採用

改正前民法における瑕疵担保責任については、学説上「法定責任説」と「契約責任説」が対立していました。

1.法定責任説

 特定物の売買においては、契約で定められた目的物を引き渡せれば足りるという考え方(特定物ドグマ)を基本としつつ、売主・買主間の公平を図るため、売主に特別の責任を認めたが「瑕疵担保責任」であるとする説です。

法定責任説によると、瑕疵担保責任は、特定物に関する有償契約についてのみ適用されます。

2.契約責任説

 実際に引き渡された目的物の種類・数量・品質が、契約内容と適合していない場合には「不完全履行」に当たるため、瑕疵担保責任は「債務不履行責任」の一種として捉えるべきであるとする説です。

契約責任説によると、瑕疵担保責任は、目的物が特定物・不特定物のいずれである場合にも適用されます。

 

 改正前民法下では、法定責任説が一応の通説とされつつも学説上の批判が根強かったため、現行民法では契約責任説を明示的に採用し、「契約不適合責任」として再構成されるに至ったのです。

 

 ②買主側が利用できる救済手段が増えた

 改正前民法における瑕疵担保責任では、買主は売主に対して、「損害賠償請求」と「契約の解除」を行うことができるにとどまりました。

 

 これに対して、現行民法における契約不適合責任では、上記の2つに加えて、新たに「履行の追完請求」と「代金減額請求」が救済手段として認められています。

 

 各救済手段の詳細については、後に詳しく解説します。

 

 ③「隠れた瑕疵」の要件の撤廃

 改正前民法における瑕疵担保責任では、法定責任説の考え方をベースとして、瑕疵の存在が「隠れた」ものであること、すなわち契約締結時点において、買主が瑕疵の存在について善意無過失であったことを要求していました。

 

 これに対して、契約不適合責任の下で採用されている「契約責任説」によると、契約不適合責任が発生するかどうかは、専ら目的物が契約内容に適合しているかどうかによって判断されますので、買主の善意無過失は要件となりません。

 

 そのため、現行民法下の契約不適合責任では、瑕疵担保責任で要求されていた「隠れた瑕疵」の要件が撤廃されています。

 

3.契約不適合責任に基づき、施主・買主ができる4つの請求

  施主や買主は、施工業者または売主に対して、契約不適合責任に基づき、以下の4つの請求・主張を行うことができます。

 

①履行の追完請求

目的物の種類・品質・数量が契約に適合していない部分については、買主は売主に対して、「履行の追完(完全なものを引き渡すように求めること)を請求できます(民法第562条第1項、第559条)

(例)

・雨漏りしている天井や、壁の亀裂を直してもらう

・契約とは異なる合板材の床を契約どおりの大理石で張り替えてもらう

・収納棚の台数が契約の定めに不足しているので、不足分を追加で収納してもらう

 

②代金減額請求

施主・買主が履行の追完を催告したにもかかわらず、相当の期間内に施工業者・売主が履行の追完を請求しない場合、不適合の度合いに応じた代金減額請求が認められます(民法第563条第1項、第559条)

    

    なお、履行の追完が不能となったり、相当の期間の経過前に、施工業者・売主が明示的に履行の追完を拒否したりした場合には、その時点で代金減額を請求することが可能です。

   

   (例)

 契約とは異なる合板材の床を、契約どおりの大理石で張り替えるよう請求したが、張替えを拒絶されたので、合板材と大理石の差額を返還してもらう

   

③損害賠償請求

履行の追完請求や代金減額請求と併せて、施主・買主は施工業者・売主に対し、契約不適合責任に基づく損害賠償を請求することもできます(民法第564条、第559条、第415条第1項)

(例)

・天井の雨漏りを施主自身が費用を支出して修理したので、修理代金を施工業者に対して請求する

・天井の雨漏りによって汚損した家財道具の価額を、施工業者に対して請求する

 

④契約の解除

 履行の追完を催告したにもかかわらず、施工業者・売主が相当の期間内に履行の追完を行わない場合、施主・買主は契約を解除し、代金全額の返還を請求できます(民法第564条、第559条、第541条本文)

 ただし、不適合の程度が契約および取引上の社会通念に照らして軽微である時は、契約解除までは認められず、その他の救済を受けられるにとどまります法第564条、第559条、第541条ただし書き)

 なお、そもそも引き渡しが履行不能である場合や不適合を是正できなければ契約の目的を達成できない場合などには、無催告解除が認められています(民法第564条、第559条、第542条第1項)

(例)

・基礎工事について重大な欠陥が判明し、請求をしても修補がされなかったため、建築請負契約を解除する

・床の傾きがあまりにもひどく、補修不能なため、建築請負契約を解除する

 

4.契約不適合責任に関する注意点

 

 注文住宅の新築や分譲住宅の売買においては、契約不適合責任の期間と容認事項の取り扱いについて、特に注意する必要があります。

 

①契約不適合責任の期間について

 施主・買主が、種類または品質に関して、施工業者・売主の契約不適合責任を追及する場合、契約不適合責任の責任期間内に、施工業者・売主に対して不適合の存在を通知しなければなりません。

 責任期間は原則として、「不適合を知った時から1年」です(民法第566条、第637条第1項)

 責任期間に関する民法の定めは「任意規定」であるため、特約による排除が認められます。

 ただし、新築住宅については、「品確保(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」における特則が存在します。

 すなわち、「構造耐力上主要な部分」および「雨水の侵入を防止する部分」については、「引き渡しから10年」の責任期間が強制的に適用されるので注意が必要です。

 また、以下の場合についても、施工業者・売主側の免責が認められないので気を付けましょう。

 

 1.不適合の存在を知りながら、施主(買主)に告げなかった場合

 2.自らの行為により、権利に関する不適合が発生した場合

 →いずれも契約不適合責任の免責が一切認められません(民法第572条、第559条)

 3.売主が宅建業者の場合

     →契約不適合責任の責任期間を「引き渡しから2年以上」とする特約以外の、買主の不利となる民法566条に関する特約をすることはできません(宅地建物取引業法第40条第1項)

 

②明記することで、契約不適合責任を回避可能

 契約不適合責任は、あくまでも「目的物が契約内容とは異なること」について、売主(施工業者)側が負担する責任です。

 不動産の売買契約書では、契約不適合責任の対象外とする事項を「容認事項」として記載することがあります。

 施工業者・売主としては、責任を負いきれないものについては、容認事項として漏れなく列挙しておくか、特約として契約不適合責任の対象とならないことを明記しておくことが大切です。

 一方、施主・買主としては、容認事項や特約に記載されている内容の中で、受け入れ困難なものがないかを必ずチェックしましょう。

 

5.まとめ

 住宅の購入や建築、改築は一生で何度もない大きな買い物です。

 

 新築住宅の場合は売主が最善の注意をして建築しますし、法律も消費者の保護を優先しています。ですが、万が一、後から住宅の欠陥等に関するトラブルが発生してしますことも考えられます。契約書中の契約不適合責任に関する条項を確認することが重要です。

 

 また、中古住宅を購入する場合は契約不適合責任が免責になっている場合も多々見受けられます。契約不適合責任が免責になっているということは品質の保証ができないといっている事と同じになります。そのような物件を購入する場合は細心の注意を払う必要がありますし、昨今では建物状況調査(ホームインスペクション)の活用や瑕疵保険を利用することによりリスクは軽減されますが、破壊を伴う調査は行えませんので、どうしてもリスクは残ってしまいます。このような場合でも安全面と性能面が確保できるのが、性能向上リノベーションになります。現在マイホームを検討中の方は物件に応じて最適なプランの提案をしてもらいましょう。

 

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著者情報

宅地建物取引士 刈田 知彰

      (かりた ともあき)

ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。

私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。

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著者情報 刈田知彰

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